２月の風にあたりたい。
お雛様がそう言ってるそうな。
お袋がよく云っていた。

実家には兄のところボクのところと
三世帯分のひな人形や五月人形が置いてあり
お袋が元気なころにはいつも
２月の中ごろから床の間の部屋に出されていた。
６畳間の２畳分は人形に占められ
いろいろなお菓子や果物、ご飯まで供えられていた。

８年前にお袋が入院してからは
３月３日に実家を訪れる者はなくなり
お雛様たちもずっと押入れの暗闇の中で
息をひそめている。

３年前にお袋が逝ってしまったので
押入れで出番を待っているお雛様たちは
もうふたたび２月の風に当たることなく
処分されてしまうのだろうか
そんなことを思う３月３日である